車いすの電動化の話


■車いすを電動化するための装置の種類

スーパーに置いてあるような一般的な車いすを,電動で走るように改造できることはご存知でしょうか。
 こんなユニットを取り付けることで,大抵の車いすは電動化できちゃいます。

 @ ヤマハ JWX−1PLUS (自走型車いす用)
 画像はヤマハさんのカタログより頂きました。

 車輪は20インチ,22インチ,24インチの3種類があります。電磁ブレーキ付の120WACサーボモータのユニットです。


 A ヤマハ ジョイユニットXPLUS (介助型車いす用)
 画像はヤマハさんのカタログより頂きました。

 車輪は16インチのみで,駆動用モーターの仕様はJWX−1PLUSと同じです。


 B 今仙技術研究所 デイリープラス (DPS−L/DPS−M)
 画像はイマセン様のホームページより頂きました。

 車輪は20インチ,22インチ,24インチの3種類で,電磁ブレーキ付の100W ACサーボモータのユニットです。


 C 今仙技術研究所 デイリーパル (DP−45/60)
 画像はイマセン様のホームページより頂きました。

 車輪は16インチで,最高速度が4.5km/h のものと 6.0km/h の2種類があります。


 D イーフィックス(ドイツ ALBER社製)
 画像は株式会社アルバジャパン様のリーフレットより頂きました。

 車輪は22インチ,24インチの2種類があり,高出力タイプのモーターはなんと150W! 160kgの体重の人を乗せて12°の斜面を上がれるのだから強力です。 取り付ける車いすにも高剛性のものが要求されますね。


 E イーモーション(ドイツ ALBER社製)
 画像は株式会社アルバジャパン様のリーフレットより頂きました。

この機種の特徴は,バッテリーがハブモータに内蔵されているところです。それゆえとてもスリムでカッコイイです。
 車いすをコンセント傍まで近づけられない環境の方では,充電が難しいと思われます。
 ※車輪サイズや積載荷重,ユニット重量など,調べましたら追記していきます。


 F 株式会社アクリテック TRD−1
   画像は株式会社アクリテック様のホームページ,およびパンフレットより頂きました。

 この製品はユニークです! 標準の車いすのタイヤをローラーで挟み込み,タイヤを回してあげる仕組みです。
前述の@〜Eの機種では,車輪の中心軸近くを駆動して大きな車輪を回そうとするので,モータには大きなトルク出力(軸を回す力)が要求されます。
 バットの太い方を握った人と細い方を握った人で,バットをひねる力比べをしたとき,太い方を握った人の方が有利ですね!

 同様に,車いすの車輪を回そうとしたとき,車輪の中心付近を回すよりも,車輪の中心から離れたところを回してあげた方が,小さな力で大きな回転力を得ることができます。  この製品では,この方法を取ることで大幅な小型・軽量化を実現しています。

 この製品を軽量タイプの車いすに取り付ければ,電動でありながら20kg以下の電動車いすが作れます。

技術的にも特筆すべき点があります。この製品はトラクションドライブです! 通常,回転を伝達するだけなら歯車を使うところ,円盤を使っているのです。

 トラクションドライブは歯がないローラ(円盤)同士を強く押し付けて,摩擦力で駆動力を伝達する構造です。 ローラが金属ならばスポーリングなどの疲れ損傷を回避するため,特に高度な潤滑技術,加工精度,組立精度を要します。低騒音であることや,回転量を伝達する精度が高いことがメリットですが,歯車駆動と比較すると圧倒的に高度な技術です。

 回転入力がプーリであることとの設計的なバランスが謎ですが,トラクションドライブ機構を制作できるだけですごいです!

 極圧下での駆動のために潤滑油を使っていると思います。 オイルの封止にも高度な技術を使っているでしょうし,駆動ローラにオイルが付着すると大問題です。品質や安全性の保障は難しいだろうな、と思いましたが、残念ながら2018年6月にて販売終了のようです。
 気になる人は,購入するのは今のうちですよ!


 G アクセスインターナショナル スマートドライブMX2
 画像は株式会社アクセスインターナショナル様のホームページより頂きました。

 さて,どんどん奇抜な形になってきました。 この製品はリジットフレームの車いす用と,折り畳み車いす用の2種類があります。
フレームにワンタッチで取り付けられ,アシストのオンオフを自在に切り替えられます。 完璧な電動ではないようですが,ユニークな製品なので
取り上げさせて頂きました。

 参考動画)
 https://youtu.be/8uIXemVXlD4


■各社の製品の特長比較

 ご紹介したように,色々な種類の電動化ユニットがありました。 こで,ユーザーサイドが気になる機能を整理してみました。
 注)車輪径は22インチ仕様,バッテリーはニッケル水素仕様のデータです。 Gはアシストユニットです。


@JWX-1PLUS
Bデイリープラス
Dイーフィックス(EX26)
Eイーモーション
FTRD-1
GスマートドライブMX2
モーター
DC24V 120Wx2
24V 100Wx2
24V 150Wx2
24V 60Wx2
24V 100Wx2
積載荷重
125kg
100kg
160kg
130kg
75kg
登坂角度
8.5°
10°
速度 [km/h]
4.5 又は6
4.5 又は6
6又は8
6又は10
6
航続距離 [km]
15
20
26
25
5
ユニット重量[kg]

バッテリ含まず
15.3
18
18.9
20

注)バッテリ含む
6
6.1
特徴
電動化といえばコレ。おそらく国内で最も実績のあるユニットではないでしょうか。
さすがに今仙さんも技術力のある会社です。モータ出力を抑えつつヤマハ同等の性能を出しています。
160kgの人を乗せて12°の坂を登れるのはこの機種だけです。
進行性疾患の方だと,将来的に充電作業ができなくなる可能性があります。障害が固定している方向けだと思います。
なんといっても軽量かつシンプルです。電動ユニットのローラと車輪側面の摩擦で駆動するため,タイヤの空気圧管理やローラの摩耗監視が大切になります。
キャスタ上げも自在。車いす自体には全く手を加えないので,アクティブなユーザのスキルを阻害しないユニットだと思います。

 こうしてみると,大柄な人が多いドイツ製では大出力の設定があったり,登坂角度が大きかったりすることがわかります。
また,小型・軽量を維持しつつ電動化できる製品も,世の中にはあるのですね。


■価格について

 機能や特徴は概ね判りましたが,これを購入にはいくら位かかるのでしょうか?希望小売価格を纏めてみました。

メーカー
ヤマハ
今仙技術研究所
アルバジャパン
アクリテック
アクセスインターナショナル
型式
@JWX−1PLUS
AジョイユニットXPLUS
Bデイリープラス
Cデイリーパル
Dイーフィックス
Eイーモーション
FTRD-1
GスマートドライブMX2
価格(税抜)
313,000円
313,000円
297,000円
297,000円
900,000
820,000
調査中
600,000円

 … やはりお安くはないですね。しかし,実際に車いすの電動化が必要な方には市町村による給付が受けられる場合があります。
※ ヨーロッパのものは,仮に補装具給付を受けたとしても実費で75%程度を自己負担することになると思われますので,ご注意くださいませ。


■障害者総合支援法における給付を受ける場合

 障害者総合支援法の障害福祉サービスを利用した際の利用者負担は,原則1割負担です。
 生活保護を受けている世帯や,住民税が非課税の世帯については,利用者負担はありません。

 「今の車いすを電動化しないと,自立した生活ができなくなってきた!」という方は,補装具給付が受けられるかもしれません。市役所の障害福祉課へ相談してみて下さい。 (もんちゃんに来てくれても良いですよ,というか是非相談に来てください!)



 … と,ここまでを読むと,補装具給付を受けられればヤマハの電動ユニットを1割の自己負担で3万円程度で購入して,車いすの電動化ができる!と思われるかもしれません。
また,非課税の世帯の方は全額公費でサポートしてもらえる! と思われるかもしれません。


 しかし実際には,10万円前後の自己負担が発生するものとお考えになった方が現実的です。 補装具給付には「購入基準」「修理基準」というものがあり,上記の「簡易型電動装置」に対する給付額は,157,500円までが上限と定められています。

 電動ユニットに含まれるバッテリーや充電器などに対しても給付が受けられるため,それを加算することもできますが,電動ユニットに付属するものを全て加算しても27万円に届くかどうかです。
 さらに,前述の価格には消費税が含まれておりません。手漕ぎの車輪を外して電動車輪を取り付けるには,作業工賃も発生します。

 生活保護の方や非課税の世帯では,ご自身の身体的なご苦労のほかにも,経済的な面でもとてもたいへんだと思います。 当然,この不足分を自己負担するのは厳しいことだと感じています。
 しかしながら,福祉用具業者が給付される方の自己負担分を肩代わりするわけにもいきませんし,経済的に厳しい方へ高額な請求をすることも心苦しくてなりません。

 現在の補装具給付制度のこういった部分は,福祉用具で利用者さんを手助けしたい事業者にも,福祉用具で日常を回復できる利用者さんにも,両方に悔しい思いをさせていると思います。

障害者総合支援法における給付制度が,サービス利用者の生活の実態に即した制度へと進化することを,切に願う次第です。